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「Classroom☆Crisis」公式インタビュー
第1回:米内則智さん(アニメーション・プロデューサー)

「Classroom☆Crisis」にはさまざまなクリエイターが参加しています。その方々のクラクラに対する思いをみなさんにお届けできたら。そんな思いでお届けする連載スタッフインタビュー。
今回登場していただいたのはアニメーション・プロデューサーの米内則智さん。米内さんはBONESを経て独立し、アニメーション制作スタジオ・Lay-duceを立ち上げます。独立直後から現在までにスマホRPG「グランブルーファンタジー」のPV制作やTVアニメ「GO!GO!575」、OVA「マギ シンドバッドの冒険」などの制作・プロデュースを手がけ、本作でいよいよオリジナルTVアニメシリーズの制作に取りかかります。

どんな仕事でも楽しんでしまう。そんな彼らの姿を見てもらいたいです

―本作の企画の立ち上がりをお聞かせ下さい。

米内

最初のきっかけは飲み屋ですね(笑)。もちろんまだ、今の『Classroom☆Crisis』という形になる随分前ですが、オリジナル作品をいつか作りたいねという話しのなかで、まあどんなスタッフで、どんなフィルムにしたいとかいろいろと話しをしていくじゃないですか。そんなときにMBSの前田(俊博)さんから、丸戸史明さんの描くシナリオが面白いというお話しを伺ったのが最初のきっかけです。そこから丸戸さんのこれまでの作品に自分も触れてみて、面白い物語を描かれる方だなという印象を持ち、具体的に企画の話が動き始めました。

―そもそもオリジナル作品を作りたいというきっかけは何かあったのでしょうか?

米内
今まで自分は原作のある作品に携わることが多かったこともあって、オリジナル作品をなかなかやる機会がなかったんです。いつかはチャレンジしてみたいなとはずっと思っていました。

―長崎健司監督・かんざきひろさん・丸戸史明さんというスタッフィングはどのような発想から生まれたのでしょうか?

米内
かんざきひろさんは昔からお付き合いがあって、丸戸さんがこれまで手掛けてきたPCゲームやライトノベルとも親和性が高い方なので、キャラクター原案として参加していただきました。ただ、そういった仕上がりが見えやすいスタッフ要素だけでは作品として予定調和になってしまうので、その中に化学反応を起こせる要素として、長崎健司監督を持ち込んだら、どんな作品になるのか予想できないワクワク感が出せるんじゃないかなと思いました。

―長崎健司監督とのお付き合いは長いのでしょうか?

米内

長崎(健司)監督は以前、「No.6」をご一緒したときからのお付き合いです。いろんな人の意見を求めつつ、形にしていくことができるタイプの演出家で、なおかつ自分の拘りたいポイントを明確に持っている方なので、オリジナル作品ではいいディスカッションができるだろうと思いました。

―丸戸さん・かんざきさん・長崎監督のお三方の参加が決まったとき、どのような印象をお持ちになりましたか?

米内
まだ明確なイメージはできていませんでしたが、それが逆に面白いんじゃないかなと思いましたね。折角のオリジナルなのに最初からどんな作品になるのか見えてしまうと面白味は薄いと思うので、一体どうなるのかわからない方がお客さんにとっても一番ワクワクするのかなと考えました。

―ストーリー、キャラクター、演出、それぞれの面で本作の注目ポイントを教えてください。

米内
実は最初、丸戸さんには「青春モノ」を提案しましたが、ご本人から「青春モノ」の切り口だけじゃなく、今までにやったことのない新しいジャンルに取り組んでみたいという提案をもらいました。そういう経緯もあってか、本作は丸戸ファンの皆さんがご覧になっても今までとは少し違う面が楽しめるものになっているんじゃないかなと思います。また印象的なセリフ回しなど丸戸さんならではの部分はしっかり活かされているので、そこも楽しみにしていてください。
かんざきさんが手掛けたキャラクターに関しては、「俺の妹」のときのような可愛らしいキャラのイメージはありつつ、今回はストーリーに寄り添う形でデザインを進めていて、ご本人的からも幅を持たせたデザインで攻めたいと仰っていただいたので、これまでのものとは少し違う要素が垣間見れるかなと感じています。大きくデザインラインが変わったわけではないんですが、かんざきファンの皆さんにも新鮮な驚きがあるものに仕上がっているんじゃないでしょうか。
演出に関しては、本作は、結構振り幅の大きい物語なので、長崎監督の方では、真面目な部分と、笑える部分を、緩急つけて肩肘はらずに見てもらえる演出を目指しています。ある意味、力を抜いて見てもらえるといいのかなあと(笑)。

―作品が形造られていく中で、それぞれのクリエイター同士の意見交換の場などは定期的にあったりしたのでしょうか?

米内

今回、本読みにはかんざきさんも少し参加していたので、そうした場面でクリエイター同士の意見交換や化学反応はありました。元々、丸戸さんの案では結構キャラクターの少ないストーリーだったのですが、皆で意見を交換していくなかで、A-TECのメンバーはそれぞれに大事な役割を与えられながら増えていったりして。またキャラクターデザインがあがると丸戸さんの手でシナリオにセリフが足されていってキャラの振り幅が大きくなっていったりとか、そういった場面は結構ありましたね。こういう絵ならこういったセリフが似合いそうだなとか。

―今作はご自身が代表を務めるLay-duceにとって、初めての30分のTVシリーズになります。現場の雰囲気はいかがでしょうか?

米内
アニメーション・ディレクターの石野(聡)さんを始め、作監さんや、メインスタッフの皆さんは長年やっているベテランで、凄いスキルを持っている人たちばかりで、作品に対してもそれぞれ熱をもってもらえているので、そこはもう安心しています。制作の面では設立間もないスタジオなので、まだまだキャリア的にも若く、メインスタッフの皆さんの足手まといにならないように、精一杯頑張っています(笑)。

―本作は火星を舞台にしていますが、SFや近未来の要素はどのように描かれていくのでしょうか?

米内
正直に言ってしまうと、本作はあくまで学生たちの青春模様や人間関係のドラマがメインで、その舞台装置として火星やSF・近未来の要素を配置しました。逆に舞台を現代日本にしなかったのは、コメディとしてしっかり皆さんが笑えるものにしたかったからです。事前の宣伝などではまだ伝わりづらいかもしれませんが、現代を舞台にすると本作の持つシリアスな要素がだいぶ強くなっちゃうかなと思って(笑)。だからこそ、SF的な舞台設定にして「ありえそうでありえない、ありえなさそうでありえる」というそのさじ加減を楽しんでもらえたらなと思っています。

―とはいえ、X-2やロケットエンジンなども本作には登場しますが、こうしたメカニックの要素はどのように形づくられていったのでしょうか?

米内
まだ本編をご覧になってお客さん的にはロケットというとNASAとかJAXAとかが開発している大気圏外へ行く、打ち上げ式ロケットのイメージを思い浮かべるかもしれませんが、本作に登場するロケットは星間航行用で、X-2のデザインなんかを見てもらうとわかりますが、運送用・搭乗物としての側面が強いです。カイトたちA-TECのメンバーはこのエンジンの機能・性能向上を目指し日々開発に取り組んでいます。

―そのほか本作のこんな部分に注目してほしいというところはありますか?

米内

実は物語をつくっていく上で、実写のドラマ的な見せ方というのは少し意識しています。あとは群像劇の要素もあるので、モノローグは比較的少ないかもしれません。キャラクターたちの関係値や立場の変化で見てもらえる内容になっているので、モノローグで語られる心情より、それぞれがそれぞれの立場でどういう風にもがいているのかをみせる感じですね。そういう意味でもドラマっぽい要素はほかの作品よりも少し強めかもしれませんね。

―「高校生サラリーマン」などのキーワードも登場しますが、働くことをモチーフにしたのはなぜでしょうか?

米内
やっぱり仕事は楽しんでやらないといけないと思うんですよね。どんな仕事でも楽しんで仕事しないと。辛さのなかから、楽しみを見つけるのも自分たちの力だよって。A-TECのメンバーたちがこれから出会うさまざまなドラマを観ながら、そんな風に感じてもらえたら嬉しいですけどね。

―最後に本作を楽しみにしているファンの方々へ一言いただけますか?

米内
今までの作品とは一味違ったテイストの作品になっているかなと思うので、是非、楽しんでもらえたらなと思っています。よろしくお願いします。
取材・文 片岡裕貴
次回は7月5日(日)音楽・林ゆうきさんへのインタビューをお届けいたします。