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「Classroom☆Crisis」公式インタビュー
第3回:丸戸史明さん(シリーズ構成・脚本)

「Classroom☆Crisis」にはさまざまなクリエイターが参加しています。その方々のクラクラに対する思いをみなさんにお届けできたら。そんな思いでお届けする連載スタッフインタビュー。
今回登場していただいたのはシリーズ構成・脚本の丸戸史明さん。PCゲームライターとして活躍し2010年からリリースのはじまった『WHITE ALBUM2』でさらに注目を浴びることとなります。2012年には『冴えない彼女の育てかた』を富士見ファンタジア文庫から上梓し、ライトノベル作家としても活動をスタートさせました。上記2作のアニメ化では自らシリーズ構成・脚本を手がけています。名実共に、今最も注目を浴びるシナリオライターの1人です。

今までにないくらい好き勝手にやったと思います

無茶な企画にみんなが乗ってくれた

―本作に関わるようになったきっかけを改めてうかがえますか?

丸戸
MBSの前田(俊博)プロデューサーと2010年くらいに飲みに行ったのがきっかけです。前田プロデューサーの知人である某同業の友人からお誘いを受けての食事会で、その友人と僕と、それから『結城友奈は勇者である』のタカヒロというメンツが揃っていました。今思えばこの日『ゆゆゆ』と『クラ☆クラ』が立ち上がったともいえますね(笑)。

―本作の企画、それから長崎健司監督、かんざきひろさんの名前を知ったのはいつだったのでしょうか。

丸戸

前田さんから「この3人でやりたい」と聞いたのは2013年でした。フリーの人間からすれば萎縮するような超デカいビル(MBS東京支社)に呼び出されて(笑)。みんなで集まったのはそのあとで、雨がザーザー降っていました。思えば先述した2010年の飲み会も大雨でしたし、初回放送日の7月3日も大雨、このプロジェクトは雨がつきものですね。

―最初に長崎監督、かんざきさんのお名前を知った時の感想を教えてください。

丸戸
長崎監督はまず助監督をやられていた『機動戦士ガンダム00』が好きだったので楽しみにしていました。ところがその後すぐに『ガンダムビルドファイターズ(以下、GBF)』でどんどん有名になってしまって、こちらが捨てられるのではと心配でした(笑)。かんざきさんについては僕にとっては雲の上の存在で、最初にお名前を見て「うはっ…」と変な笑いが出たのを覚えています。

―企画当初、どのような作品を志されたのでしょうか。

丸戸
最初にもらった企画書には「小さい舞台での恋愛もの」と軽く一行くらいで書かれていたんですが、そこはもう丸っきり無視して(笑)、企業が舞台の人間ドラマという企画を出しました。かねてから頭の中にあったものだったんです。アニメとしては無茶な企画という自覚もあり、ボツを食らったら別の企画を出すつもりでしたが、みんな意外に乗ってくれたんです。そこから全員で色々なアイデアを持ち寄って、アニメとして映えるように現状の舞台や設定へと昇華されていきました。

―今までとは違い、オリジナル作品である本作には当然原作がありません。どのように企画制作を進めていったのでしょうか。

丸戸
原作があればそれを評価していただくだけなのですが、今回は情報量の少ない企画書だけを頼りに、自分の頭の中をさらけ出すようなプレゼンによって企画のゴーサインを貰わなければならないんです。今まで以上に実現のハードルは高く、今まで以上にプレゼン力が求められました。まさに本編中にこれから出てくるような“企業のプレゼン”を必死にやったおかげで詐欺師的なスキルが飛躍的に向上したような気がします(笑)。もともと僕はとある製造系の企業に勤めていたことがあって、シナリオには他の業界では知り得ないようなことも活かしているつもりなので、そこに共感や面白味が得られればいいなと思っています。

―今まで書かれてきた作品とは方向の違う、企業モノを書こうと思われたのはどうしてなのでしょうか。

丸戸
トレンディードラマ(『WA2』)、シチュエーションコメディー(『冴えカノ』)と書いてきて、次は人間ドラマがやりたかったんです。どれも大好きなジャンルで、自分の血肉になっているものです。たまたまやる順番が一番後だったから書いてなかっただけですね。他の理由としては、過去の実体験からの引き出しとして、あと残ってるのがコレだったからというのもあります。自分のサラリーマン時代の全てを注ぎ込みました。本当にウィンウィンとかイノベーションとか言ってましたよ。訳もわからず(笑)。。
女の子の可愛さは絵と演出にお任せします

―企画会議や本読み(シナリオ打ち合わせ)では主にどのような点を話し合われたのでしょうか。

丸戸
会社(製造業)というのはどのようなことをしているのか、社内における“勝ち負け”とは何なのか、社内にはびこる問題点やその解決策は何か、そしてそれらの話をどう面白く膨らませていくかみたいなことを話し合ってたような気がします。こうして思い返してみると、とてもアニメの企画会議をしてるようには聞こえませんね(笑)。

―本作のような群像劇を書いていく際、気を付けた点や楽しかった点、苦労した点を教えていただけますか?

丸戸
まずさっきも言ったように、作中にはプレゼンや会議みたいなシチュエーションが多く登場するので、どうしても説明的かつ長台詞にならざるを得ない話でした。なのでそこをいかにテンポよく効率的に進めていくか心を砕いた……はずですが、やっぱり台詞は多いし、長いです(笑)。でもそれが退屈にならないようにメリハリをつけるよう頑張りました。またシナリオに描ききれなかった個々のキャラクター描写は、長崎監督がすごく工夫されていて、いろんなキャラクターを短いテンポで見せてくださっているので、さすがだなと感じています。

―A-TECのキャラクターたちには全員名前があり、重要な役どころとなっています。

丸戸

A-TECは企業のレースチームをモチーフにしているんです。加えてひとつの教室にいる最小人数、ということで約10人になりました。打ち合わせで「A-TECのメンバーを10人にしよう」という話が出た時、隣でかんざきさんが「え、10人?」と青ざめていたのをよく覚えています。いきなり10人もデザインしないといけないキャラクターが増えたわけですから(笑)。まぁ僕も10人のキャラ付けをしなくてはならなくなり大変だった訳ですが。彼らがそれぞれどういった役職・ポジションなのかは企画会議の参加メンバー全員と相談して考えていきました。

―今作は今までの丸戸作品とはかなり違う感触ですが、特に気を配った、苦労した点やシナリオ上での本作の見どころとも呼べる点はどこでしょうか。

丸戸
次も見たくなるような作りにしたかったので、各話の特に後半部分にドラマの引きを意識して書いてます。本読みの時にでた意見では、各話の終わりに次の事件の発端が描かれる…といった案もあったんですが、そこまではやらなかったです(笑)。とはいえ毎回、『ここで続くのかよ!?』みたいな感覚を味わっていただければ嬉しいです。あと今回に関しては、萌えや女の子の可愛い描写にあまり脚本を割いていないのでそこはごめんなさい。そっちは長崎監督とかんざきさんががんばりますから(笑)。今回僕は男キャラの長ゼリフに注力しています。
騙されたと思うかも知れませんが…

―動きや言葉が出て来やすいキャラクター、逆に書くのに苦労したキャラクターは誰でしょうか。

丸戸
会社の連中は皆楽しかったです。特に一番すらすら台詞が出てきたのはナギサでしたね。いい感じのダークヒーローになってくれたのではと期待しています。逆に苦労したのは……A-TECの生徒たちのキャラ付けや関係性を構築するまでが大変でした。一度構築してしまえば後は勝手に動き出しましたが。

―カイトやナギサ、ミズキ、イリスといったメインの4人はどのようにキャラクターを確立していったのでしょうか。

丸戸
カイトとナギサのライバル関係を軸に組み立てていきました。企業側にいる若くして出世した人間を暗い性格に、カイトはその対比で熱血の天才エンジニアにしようと。最初は黒の主人公(ナギサ)に対して白かな、というくらいでしたが、アニプレックスの斎藤(俊輔)プロデューサーが企画書に「カイト=エンジニア界の松岡修造」と書いていて、そのイメージが今のカイトにうまく着地した気がしています。メインヒロインが二人いるのは……まぁ、丸戸の伝統の関係性ということで。多くは言いません。

―丸戸さんが放送で楽しみにしていることは何でしょうか。

丸戸

というかとても怖いです。自分が遊びまくった脚本に悪乗りして、監督やプロデューサーの方々がまた遊ぶ遊ぶ。集めたスタッフやキャストが物凄いことになりガタガタ震えてます。「皆、俺に騙されてるんじゃない!?」って(笑)。米内プロデューサーが最初「低予算で考えてるよ」と言っていた頃を懐かしく感じます。

―ひと足先に第1話の完成映像をご覧になったそうですが、ご感想はいかがですか。

丸戸
自分はとにかく好きです。序盤からいろいろとてんこ盛りです。第4話あたりまでいくと本作が「こんな感じなのかなあ」とおおよそわかっていただけるものになっているかなと思います。

―長崎監督のフィルムに期待することは何ですか?

丸戸
長崎監督は最上級のエンターテイナーだと思っています。自分のわかりにくいマニアックな脚本を、誰でも楽しめる最高のアニメにしてくれると信じていますので、後はお任せします。監督、視聴者のみなさんに怒られたら一緒に責任取ってください。

―最後に楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

丸戸
今までにないくらい好き勝手やったと思うので、もしかしたら騙されたと思うかもしれません(笑)。ですが、本当に最後の最後まで疑いながらついてきていただければうれしいです。「よくわからないけどおもしろい」と思ってもらえるように全力投球しましたし、作っている間じゅう、ずっと楽しかったです。「みなさんが求めていたものだ」とはとても保障できませんが、ただ、人間の根源的な部分に訴えるような単純におもしろい物語を目指したつもりですし、さらに長崎監督やスタッフのみなさんがそうしてくれていると思っています。
アニメを普段見ていないような管理職の人にも見てもらいたいですね(笑)。どうぞよろしくお願いします。
取材・文 細川洋平
次回、インタビューは7月中旬にお届けいたします。